三好ユキ子

MIYOSHI Yukiko



 ―風― (私の小宇宙)

 東京から南房総に移り住んでからもう7年になる。
 最初は強い浜風にとまどいながら年を経るにしたがって、その風が四季 折々には東西南北のやさしい風となり,まわりの自然に力強い生命力と美 しさを育むのを感ずるようになった 。
 そして、その神秘ないとなみを私の小宇宙として表現したいと思う。

 1994年4月

三好ユキ子   

1962 自由美術協会会員
1968 同協会退会
個展  
1964・65 ときわ画廊(東京)
1967・69・71 シロタ画廊(東京)
1971・72 紀伊国屋画廊{東京)
1974・75 ギャラリーくぼた(東京)
1974 ラングサム・ギャラリーズ(オーストラリア)
1978・80 櫟画廊(東京)
1979 ギャラリー射手座(京都)
1981 東邦画廊(東京)
1986・88・92 日辰画廊(東京)
1993 始弘画廊(東京)
1996・99 ぎやらりいセンターポイント(東京)
   
グループ展
1963 2人展 夢土画廊(東京)
1969・71 国際青年美術家展(東京)
1971・73 プレミオ・ビエラ国際版画大賞展
グランプリ候補(イタリア)
1972・74 クラコワ国際版画ビエンナーレ(ポーランド)
1975 SPACE 4 ギャラリーくぼた(東京)
1976〜85 神奈川版画アンデパンダン展
(神奈川県民ホール)
1977 イビザ国際版画大賞展(スペイン)
和光ウインドー展(東京)
パーパース 5人展 さくら画廊(東京)
1979 毎日現代展(東京都美術館)
1981 精神の幾何学展(東京都美術館)
21世紀の住空間展(東京セントラルアネックス)
特集企画81版画展 81美術館(東京)
1982 SPACE 6 エリナ画廊(東京)
1983 2人展 平松画廊(大阪)
1984 SPACE 7 村松画廊(東京)
1985 現代版画展望シリーズ
(ぎやらりいセンターポイント・東京)
CWAJ版画海外巡回展 ハワイーワシントン
ーシカゴ ーニューヨークーセーラムーロンドン
(大英博物館)
1986 ミニミニ美術館(東京・練馬美術館)
1988 第4回小さな美術展(東京・高島屋)
1989 ねりまの美術(東京・練馬美術館)
1989・90 (第1・第2)コンテンポラリー・アート
・フェスティバル (埼玉県立近代美術館)
1989・90 JAPON 「小さな紙展」(ベルギー)
1992 BOITE 彩林画廊(横浜)
1993 第14回ミニプリントカダク国際展(スペイン)
第1回ミニアート国際展
ストックホルム(スウェーデン)
1996 第2回朝日選抜展
(朝日アートギャラリー・東京)
1997 現代美術の精鋭展
(プルミエ・ギャラリー・東京)
1997・98 朝日選抜秀作小品展
(朝日アートギャラリー・東京)
1998 今日のガラス絵展 秀友画廊(東京)
1998 MOUVEMENT展
(ぎやらりいセンターポイント・東京)
   
作品収蔵 神奈川県民ホール
大英博物館
小さな美術館(神奈川県 小田原市)
K・K橋本屋



個展のお知らせ
  三好ユキ子展
会場:ぎやらりいセンターポイント
日時:2001年10月1日(月)〜 10月13日(土)
   11:00a.m.〜6:30p.m 
   土曜・最終日5.00p.m.まで  日曜休廊


Yukiko Miyoshi Solo Shows

1964・65 Tokiwa Gallery, Tokyo
1967・69・71 Shirota Gallery, Tokyo
1971・72 Kinokuniya Gallery, Tokyo
1974・75 Gallery Kubota, Tokyo
1974 Langsam Galleries, Australia
1978・80 Kunugi Gallery, Tokyo
1979 Gallery Iteza, Kyoto
1981 Toho Gallery, Tokyo
1986・88・92 Nisshin Gallery, Tokyo
1993 Sicoh Gallery, Tokyo
1996・99 Gallery Center Point, Tokyo
 
Gruoup Shows
1963 Two Men Show, Mudo Gallery, Tokyo
1969・71 International Young Artists Exhibition, Tokyo
1971・73 Premio Internazionale Biella per Lincisione, Italy
1972・74 International Print Biennale in Crakow, Poland
1975 SPACE 4 Gallery Kubota, Tokyo
1976〜85 Independents Exhibition of prints in Kanagawa, Kanagawa Prefectural Hall
1977 Museo de Arte Contemporaneo de Ibiza, Spain Wako Window Show, Tokyo Five Men Show, Sakura Gallery, Tokyo
1979 Contemporary Art Exhibition of Japan, Tokyo Metropolitan Museum
1981 Spiritual Geometry, Tokyo Metropolitan Museum
SPECTRUM・COLOR・SOUND NATURAL, Tokyo Central Annex 81 Orubt Exhibition, 81 Museum, Tokyo
1982 SPACE 6 ErinaGallery,Tokyo
1983 Two Men Show, Hiramatsu Gallery, Osaka
1984 SPACE 7, Muramatsu Gallery, Tokyo
1985 Viewseries of Contemporary Print, Gallery Center Point, Tokyo
CWAJ Print World Exhibition Hawaii-Washington-New York-Salem-London (The British Museum)
1986 Mini Mini Museum, Tokyo Nerima Museum
1988 The 4th Small Art Show, Tokyo
1989 The Art of Nerima, 89
(Tokyo, Nerima Museum)
1989・90 89 Contemporary Art Festival (Saitama Prefectural Modern Museum)
1989・90 JAPON 89-Petit Format de papier (Belgique)
1992 BOITE, Sairin Gallery, Yokohama
1993 The 14th Mini Print International of Cadaques, Spain
The First Annual International Exhibition of Miniature Art, Stockholm, Sweden  
 
Pubric Collections    
Kanagawa Prefectural Hall
The British Museum
The Small Art Museum, Kanagawa Pref.

 


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186×184cm
―風―99-1
キャンバスに油彩
1999



186×184cm
―風―99-2
キャンバスに油彩
1999



140×200cm
―風―99-5
キャンバスに油彩
1999



30.3×24.2cm
風景98-4
ガラス絵(油絵の具)
1998



19.0×27.0cm
風景99-4
ガラス絵(油絵の具)
1999


  
三好ユキ子の世界
― 宇宙・自然・風土の“気”と“風”─

林 紀一郎  

 1969年、アメリカの有人宇宙船アポロが人類の歴史上初めて、月面 に 着陸した。太陽神アポロが月と接触したのだ。この光景をテレビ画面で 見た地上の人びとはだれもが感動したにちがいない。三好ユキ子も感動 した。いや感動を通 り越してしまった。月面に彼女自身下り立ったような 名状しがたい宇宙感覚に浸ったのだ。

 以来、三好ユキ子は宇宙人になった。油彩で人間なんぞ描いている暇 はなかった。シルクスクリーンで月面 地図を作る。それを壁いっぱいにし て、彼女は月面地図の空間の中で呼吸するのだ。70年代の仕事は、もっ ぱら月面地図の空間に生きていた。やがて、彼女は、丸と四角に、ものの 形の原点を見出す。サイコロの四角と賽の目の丸。詩人マラルメの”骰子 一擲”の偶然性の哲学よりも、画家三好ユキ子の「サイコロ」ジーの美学の 方が人の眼を幻惑するのである。部屋中サイコロだらけ、丸と四角の限り ない連結模様の空間のオプティカルな効果によって、わたしたちの眼が眩 み、心が動く。こんどは三好ユキ子は「サイコロ」ジストになったのだ。

 万物流転・・・・・・パンタ・レイ。三好ユキ子も流転する。つねに原点を求めて・・・・・・。こんどは金箔と和紙。ものの形からものの素材、ものそのものに 彼女の感性の触手は動くのである.金箔に和紙を貼り、湿度で和紙が伸び 縮みするその物理的効果を利用して、変形する立体を制作する日がつづく。 もちろん、ものの形への関心もなくなってはいない。丸と四角に加えて、もっ と自由でのびやかな切り抜き紙 (cut out) が、赤や黄や金色の彩りをきわだ たせながら、その形を、壁から床へと
垂らした無彩色の月面地図の上にレリ ーフ状に浮かびあがらせるのだ。色と形と素材だけの何の感情もはらまない これらのオブジェたちにも「MOON」などというタイトルが付けられると、シルク スクリーンの月面地図の上に金箔や赤や黄色の切り抜き紙が、まるで月面 を 探検する宇宙服姿の三好ユキ子の分身のようにみえてくるから不思議である。 86年から90年にかけての仕事である。

 さて、こんどはキャンバスにオイルスティック状の油絵具で描いた一連の仕事 がはじまる。月面地図は遠のいたが、代わりに、宇宙空間にも自然空間にも生 活空間にもたぶん流動し浸透しているだろうところの“気”が描かれる.画面 空 間を、気の向くまま、手の動くまま自在奔放にオイルスティックの色線が迷走す る。形にならない形が現れては消えていく。アンフォルメル絵画か? そうでは なかろう。「シコロ」ジストの心理学的ドローイングかもしれぬ。要するに“気”ま まに描きだされる精神の“気”であり、宇宙の、自然の、“気”なのである。92年 ごろの仕事である。

 そしていま、三好ユキ子は、少しばかり“気”が変わる。“気”は“風”になる。 “かぜ”ではない。“ふう”なのだ。三好ユキ子の精神の風土の“風”・・・・・・。 音楽のように風は自由なリズムをはらみ、オイルスティックの緑や朱や黄色の 暖かい気をその色線や色帯にはらみ、あらゆる地上の制約から解き放たれ、 人間の絆からも離脱して、三好ユキ子の風土に湧き起ち、うねり、吹き渡り、 吹き抜けてゆく。風はどこへ吹き抜けていくのか? 私は思う。表現の自由と いう限りない地平へ向って・・・・・・だ。  

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